マイホームの建設や外壁の塗り替えを検討していると、「サイディング」という言葉を耳にすることも多いかと思います。一言でサイディングといっても、作られている材質によってさまざまな種類に分けられています。なかでも、日本において普及率の高い「窯業系サイディング」とはどのようなものなのか、そのメリットやデメリット、メンテナンスについてご紹介します。
◼ 窯業系サイディングとは
サイディングとは、外壁の仕上げ用の板材のことをいいます。1980年代まではモルタルで仕上げる外壁が一般的でしたが、1990年代からサイディングによる仕上げが普及し始めました。サイディングの中でも、どのような材質で作られているかによって窯業系・金属系・木質系・樹脂系の4種類に分けられます。
窯業系サイディングはセメントと繊維質を原料としたもので、サイディングの中でも主流となっています。現在では住宅の約7割が窯業系サイディングによって外壁が仕上げられています。金属系はガルバリウムなどの金属を成型したもの、木質系は天然の木を使ったもの、樹脂系はプラスチックを加工して作られたもののことです。
◼ 窯業系サイディングのメリット
1980年代まで主流だったモルタルに取って代わった窯業系サイディングには、どのようなメリットがあるのでしょうか。最も主流な外壁材だからという理由だけで選ぶのではなく、メリットを知った上で自分のニーズに合っているかを検討するようにしましょう。
・耐震性や耐火性が高い
窯業系サイディングのメリットは耐震性や耐火性が高いことが一つ目にあげられます。耐震性に関しては、外壁材が軽ければ軽いほど揺れによる影響を受けにくい特性を持ちます。
セメントと砂、水を混ぜたものを塗り固めるモルタルと比べると約3分の1の重さなので、地震が起きてしまった場合にも家への負担が少なく済みます。ステンレスの金具を家の下地に固定してからサイディングを貼っていく工法を取ることで、耐震性は更に高まります。
また建築基準法で定められた防火性能試験によって、不燃材料や準不燃材料として認められているほど耐火性が高い外壁材でもあります。自分の家が火事になった場合はもちろん、隣や近くの家が火事になってしまった場合にも影響を受けにくいので被害を最小限に抑えることができます。
・デザイン性
たくさんのデザインから選ぶことができるのも窯業系サイディングのメリット。色や柄の種類が多く、シンプルなものはもちろん、木目調やレンガ調、タイル調など好きな外観に仕上がります。異なる色や柄、質感のものを組み合わせることで外観に個性を出すことができます。
たくさんの種類から選べるのは大きなメリットですが、どのデザインを選ぶか決めきれないという悩みが出てくるかもしれません。いきなりデザインを選んでいくよりも、どのような雰囲気にしたいかをイメージしてみると絞りやすくなります。まわりとの調和も考えながら色や柄を選ぶようにしましょう。
・費用や工期を抑えられる
家を建てるためには高額な費用がかかるため、抑えられる部分は抑えたいのが本音だと思います。窯業系サイディングの外壁は費用や工期を抑えられるのも大きなメリットです。セメントと砂、水を混ぜたものを塗り固めていくモルタルは手作業で仕上げるため、費用と工期がかかってしまうのがデメリットでした。
しかし窯業系サイディングは工場で生産されたパネルを貼り付けていくだけなので、現場での作業が短く済みます。工期が短いということはそれだけ費用も抑えることができます。たくさんのメリットがありながら費用や工期を抑えられる窯業系サイディングは、コストパフォーマンスが良い外壁材だといえるでしょう。
また手作業で仕上げるモルタルは職人の技術によって差が出てしまっていましたが、工場で生産されている窯業系サイディングは、品質が安定しています。下地やシーリングなどの細かい部分で差が出てしまうことはありますが、材質自体の品質は一定を保つことができます。
◼ 窯業系サイディングのデメリット
日本の住宅の約7割で窯業系サイディングが使用されていますが、必ずしも良いところだけというわけではありません。採用してから後悔することのないよう、デメリットも考慮した上で外壁選びを行うようにしましょう。
・熱を溜め込みやすい
窯業系サイディングの原料であるセメントは熱を吸収しやすく溜め込みやすい性質があります。そのため夏は外壁材の表面温度が高くなり、家の中の温度も上がってしまいます。また雨漏りして外壁材の中に入っている断熱材が腐食してしまうと、外壁材が吸収した熱がそのまま家の中に反映されてしまう可能性も。家の中の温度を快適に保ちたい場合は、遮熱塗料や断熱塗料で塗装をすると良いでしょう。
・防水性が低い
原料であるセメントは水を吸収する性質も持っているため、窯業系サイディング自体に防水性能がありません。表面の塗装で防水効果を保つことになるため、塗装によって防水加工を行う必要があります。外壁材自体に防水効果がなかったとしても、塗装をすることで防水できるため致命的なデメリットというわけではありません。ただし塗膜の劣化具合を見極めて早めに塗り替えを行うなどのメンテナンスが重要です。
雨漏りしたりサイディングボードが劣化してしまったりすると張り替えを行わなければならなくなります。張り替えは塗装よりも費用がかかってしまうため、定期的に塗装を行うようにしましょう。
・シーリング
外壁材への塗装だけではなくシーリングのメンテナンスも必要であるのが窯業系サイディングのデメリットです。シーリングとは、外壁材の隙間や目地を埋めるために合成樹脂を充填することをいいます。シーリングには雨が入り込むことを防いだり外壁材の強度を高めたりする役割がありますが、年数が経つと劣化しやすい部分でもあります。サイディングボードが劣化していなくてもシーリングの補修をしなければならない場合もあります。
外壁材とシーリングの間に隙間ができてしまったり、シーリングの真ん中に破断がみられたり、ひび割れや欠落が起こってしまったり、シーリングの劣化症状はさまざまです。既存のシーリングの上からの充填、または打ち替えが補修の方法となります。
◼ メンテナンス
家を守ってくれる役割を果たす外壁は、暑さや寒さ、雨風、紫外線を受け続けています。窯業系サイディングの外壁は約30~40年が寿命といわれています。そのため張り替えなどの大規模なメンテナンスを頻繁に行う必要はありませんが、定期的な細かい部分のメンテナンスが大切です。劣化の症状にはどのようなものがあるのか、またメンテナンスはどのようなタイミングで何をすれば良いのでしょうか。
・劣化の症状
窯業系サイディングは、自分の目でも劣化の症状や不具合を見極めることができます。年数が経つと、外壁を触ったときに手にチョークのような白い粉が付くことがあります。これはチョーキング現象といって、塗膜が劣化しているサイン。外壁に塗られている塗料の中に含まれる顔料が粉になって浮き出ている状態です。またサイディングは乾燥によって収縮しないためひび割れしにくい材質ではありますが、ひび割れがみられる場合は補修や張り替えが必要になります。
湿気がこもりやすい場所や雨水が当たりやすい場所には藻やカビが発生してしまうこともあります。逆に太陽の光がよく当たる場所では色褪せてしまうこともあります。すぐに補修が必要な症状ではありませんが、気になる場合は業者に見てもらうと良いでしょう。
・タイミング・方法
窯業系サイディングは約10年で塗装、シーリングの補修は7~8年が目安となっています。費用がかかってしまうため後回しにしてしまいがちですが、外壁を長持ちさせるためには定期的なメンテナンスが大切です。
日常的に自分でもできるメンテナンス方法をご紹介します。外壁に埃や土などの汚れがついた場合には、ホースや雑巾を使って水洗いをします。凹凸に汚れが溜まっている場合は、柔らかいブラシを使って取り除いてください。高圧洗浄機を使ってしまうと塗膜の劣化の原因となるため避けるようにしましょう。
藻やカビを見つけたときは、柔らかい布やブラシを使って中性洗剤で水洗いすると落とせる場合があります。漂白作用のある薬を使うことでカビの繁殖を止めることもできますが、外壁材自体を痛めてしまうこともあるため注意が必要です。
◼ まとめ
1980年代まではセメントと砂、水を混ぜたものを塗り固めるモルタルが外壁材の主流でしたが、1990年代からサイディングが普及し始めました。窯業系や金属系、木質系、樹脂系の4種類に分けられ、日本の住宅の約7割で窯業系サイディングが使用されています。
さまざまな色や柄、デザインから選ぶことができるだけではなく、耐震性や耐火性の高さなど機能面でもメリットがあります。工場で生産されたパネルと貼り付けていく工法なので現場での工期が短く、費用を抑えられるのも窯業系サイディングの大きなメリットです。その一方で外壁材自体には防水効果がないこと、熱を溜め込みやすいことがデメリットとなります。どちらも適切な塗装を行うことで対策できるため、外壁材としての致命的なデメリットではないでしょう。
大規模なメンテナンスは約30~40年の間必要ありませんが、塗装やシーリングの補修などを約8~10年で行う必要があります。外壁を長持ちさせるためにも、定期的なメンテナンスを怠らないようにしましょう。
塗装屋ぬりべえでは、千葉県と茨城県で外壁や屋根の塗装を行っています。地域最大級のショールームではカラーシミュレーションによって、お客様にぴったりの色を選んでいただくことができます。駐車場やキッズスペースも完備しているため、ご家族連れでも安心してご来店いただけます。