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冬の塗装工事、塗料の「乾き」をプロはどう判断する?硬化不良を防ぐ技術

最終更新日時 : 2026.02.24

冬の塗装工事、塗料の「乾き」をプロはどう判断する?硬化不良を防ぐ技術

冬の塗装工事、塗料の「乾き」をプロはどう判断する?硬化不良を防ぐ技術

「冬に外壁塗装をしても大丈夫なの?」という不安を抱く施主様は少なくありません。

確かに、気温が低く乾燥が遅い冬は、塗料の取り扱いが最も難しい季節です。しかし、実はプロの技術と判断基準さえ守れば、冬は塗料の定着が非常に安定する「隠れた塗装シーズン」でもあります。

今回は、冬の塗装工事においてプロがどのように「乾き」を見極め、硬化不良という失敗を防いでいるのか、その職人技と科学的根拠を解き明かします。


この記事はこんな方におすすめ!
・冬の塗装で塗料が剥げたり、ムラになったりしないか心配な方
・プロの職人が現場で何をチェックしているのか具体的に知りたい方

1 「5度・85%」の鉄則。冬の塗装が制限される科学的理由

全ての塗料には、メーカーが指定する「施工可能条件」があります。その基本となるのが「気温5度以上、湿度85%以下」という数値です。気温が5度を下回ると、塗料に含まれる水分や溶剤が蒸発するスピードが極端に遅くなり、膜を作るための化学反応(重合反応)が正しく行われません。

これを無視して塗装を強行すると、表面だけが乾いて中がドロドロのままになる「硬化不良」を起こし、数年で塗装がベリベリと剥がれる致命的な欠陥に繋がります。

冬の現場でプロが最初に行うのは、その日の最高気温と最低気温の予測、そして壁面の「表面温度」の測定です。たとえ気温が5度あっても、日が当たらない北側の壁面温度が氷点下であれば、塗料は凍結してしまいます。

プロの職人は、単なる勘に頼るのではなく、放射温度計などの計測器を使い、科学的な根拠に基づいて「今日は塗れるか、塗れないか」を厳格に判断します。この「塗らない勇気」を持っているかどうかが、冬の塗装の品質を左右するのです。

  • 気温5度以下では、塗料の「成膜助剤」が機能せず、強固な保護膜が作られない。
  • 湿度が85%を超えると、結露が発生しやすく、塗料が乾く前に水滴が混じって白化現象(かぶり)が起きる。
  • 冬は朝露や霜が降りるため、実質的な作業時間は「10時から15時」の短時間に限定される。

2 段階的な「乾き」を見極める。指触乾燥から完全硬化まで

「乾いた」という言葉には、塗装のプロの世界ではいくつかの段階があります。

1つ目は「指触乾燥(ししょくかんそう)」。指で軽く触れても塗料がつかない状態です。

2つ目は「硬化乾燥」。指で強く押しても跡がつかず、動かなくなる状態。

そして3つ目が「完全硬化」です。これは塗料が内部まで完全に化学反応を終え、カタログ通りの性能を発揮できる状態を指します。

冬場は特に、この段階ごとの見極めがシビアになります。冬の弱い日差しの中では、表面だけが乾いて見える「騙しの乾燥」がよく起きます。

プロの職人は、壁の隅や湿気が溜まりやすい場所を実際に確認し、次の工程(中塗りや上塗り)に進んでも良いかを判断します。

もし乾燥が不十分なまま塗り重ねてしまうと、下の層の溶剤が逃げ場を失い、将来的な「膨れ」や「割れ」の原因になります。冬の塗装工程表が夏よりも長いのは、この「待機時間」を正しく確保するためなのです。

  • 冬の乾燥時間は、夏の2倍から3倍の時間を要するのが一般的である。
  • 職人は、塗膜の光沢の引き具合や、ヘラで押した時の感触で「中の乾き」を察知する。
  • メーカー指定の「塗り重ね乾燥時間」を遵守し、余裕を持った工程を組むことが鉄則。

3 冬専用の武器!「防凍剤」と「冬用シンナー」の使い分け

冬の塗装を成功させるために、プロは塗料そのものに「冬の調整」を施します。

水性塗料の場合、気温が低いと凍結しやすいため、特定の条件下では凍結を防ぐ添加剤を使用することがあります。また、溶剤系(オイル系)塗料の場合は、シンナーの蒸発速度を調整した「冬用シンナー(遅乾・速乾の調整)」をブレンドします。

これにより、低い気温下でも塗料が滑らかに伸び、かつ適切なスピードで乾燥するようにコントロールします。

さらに、冬は「塗料の温度管理」も重要です。倉庫やトラックに積みっぱなしでキンキンに冷えた塗料をそのまま使うと、粘度が高すぎて厚塗りの原因になり、乾燥が極端に遅れます。

優良な職人は、現場で塗料を日光に当てて適温に温める、あるいは室内で保管するなどの工夫をします。こうした細かな配慮の積み重ねが、夏場と遜色ない、あるいは夏場以上に強固で美しい仕上がりを実現するのです。冬の塗装は「塗料を育てる」ような繊細な作業と言えます。

  • 気温に合わせた溶剤の配合調整は、熟練の職人の経験と知識が問われる部分。
  • 塗料を温めることでレベリング(平滑化)が良くなり、鏡のような美しい仕上がりが可能になる。
  • 冬専用の「硬化促進剤」を併用し、日没までに指触乾燥を確実に終わらせる。

4 施主様がチェックすべき「冬の現場」3つのポイント

冬の塗装工事が正しく行われているか、施主様として確認できるポイントがあります。

1つ目は「作業時間」です。冬は16時を過ぎると急激に気温が下がり、夜露が発生します。16時以降も暗い中で塗装を続けている業者は、結露による硬化不良のリスクを軽視している可能性があります。

2つ目は「養生の様子」です。風でバタバタと激しく揺れる養生は、塗膜にゴミを付着させるだけでなく、乾燥を妨げます。

そして3つ目は、業者が「毎日の温湿度を記録しているか」です。工事日報にその日の最低気温や天候、乾燥時間を記録し、それに基づいて次工程への判断を下している業者は非常に信頼できます。

冬の塗装は、夏場のようなスピード感はありませんが、その分、一工程一工程をじっくりと熟成させるような丁寧な仕事が求められます。焦らず、環境に合わせた施工を行うパートナーを選ぶこと。それが冬塗装で失敗しないための最大の秘訣です。

  • 夕方早めに作業を切り上げ、塗膜を夜露から守るための養生(シート被せ等)をしているか。
  • 結露がひどい朝、しっかりと拭き取りと乾燥を待ってから作業を開始しているか。
  • 「冬だから乾かないのは当たり前」という妥協をせず、最適なタイミングを待つ姿勢があるか。

まとめ

冬の外壁塗装は、気象条件という高いハードルがありますが、それをプロの技術と知識でクリアしたとき、非常に緻密で耐久性の高い仕上がりが得られます。

空気が澄んでいる冬は、ゴミの付着が少なく、色の発色も安定するというメリットもあります。大切なのは「冬でも塗れる技術力」を持った業者を見極めることです。

科学的な乾燥の判断と、冬ならではの丁寧な工期設定。この2つが揃えば、冬の塗装はあなたの家を長期にわたって守る最高の盾となるはずです。

この記事を書いたスタッフ

塗装屋ぬりべえ 編集部
塗装屋ぬりべえ 編集部
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あらゆる家づくりと住まいのプロフェッショナルとして、地元千葉と茨城との地域密着や社会貢献にもつながっていく企業として、お客様の幸せを礎に、200年企業を目指してまいります。
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・一級建築士
・二級建築士
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