外壁に使用される素材にはさまざまな種類がありますが、今回はALCパネルの特徴やメリット、デメリットについてご紹介します。ALCパネルの塗装についての知識も知っておきましょう。
◼ ALCパネルの外壁とは
ALCパネルは、「Autoclaved Lightweight aerated Concrete」の頭文字が名称の由来となっています。主成分は珪石やセメントなどであり、板状に成型したものをALCパネルといいます。外壁だけではなく、間仕切りや屋根、床材などにも使用される素材です。
・ALCパネルの特徴
ALCパネルは軽量気泡コンクリートと呼ばれており、内部に直径0.05~0.1μの細かい気泡があります。一般的なコンクリートの四分の一ほどの重さしかなく、硬いイメージのコンクリートとは違って水に浮くほどの軽さが特徴です。建物自体を軽量化することができ、外壁材の重みによって建物を劣化させる心配がありません。
ALCパネルは主成分である珪石やセメント、石灰石、アルミニウム粉末などを固めて、180度の蒸気を掛けます。10時間以上オートクレーブ処理し、鉄筋の補強を行うことで完成します。現場で一から作るのではなく工場でパネルが生産されており、品質にバラつきが少ないという特徴があります。
住宅に使用する場合、工場で生産したパネルを家の壁に張り付け、つなぎ目にシーリングを打ち、塗装で仕上げるという工程になります。日本では最近少しずつ増えてきた外壁材ですが、ヨーロッパでは100年以上も使用され続けています。
・種類の違い
ALCパネルは厚さ35~75mmの薄型のもの、厚さ75mm以上の厚型のものに分かれます。薄型のものは木造や鉄骨造の建物に使用されることが多く、厚型のものは鉄筋コンクリート造に使用されることが多くなっています。それぞれ一般パネルとコーナーパネルの二種類があり、表面加工によって平パネルと意匠パネルにも分かれます。
一般パネルは平面に張り付ける形状であり、コーナーパネルは外壁の角の部分に使用できるようにL字型になっています。平パネルとは表面に何もデザインされていないもの、意匠パネルはタイルやレンガといったデザインが施されているもののことをいいます。
◼ ALCパネルのメリット
ALCパネルは機能性が高いことから人気の外壁材ですが、主なメリットについてご紹介します。家を建てる地域や外壁において何を重視したいかによっては大きなメリットに感じられるかもしれません。
・耐久性
一番大きなメリットとしてあげられるのが耐久性の高さ。ALCパネルの内部には鉄筋マットやスチール製の金網が組み込まれており、強度が高くなっています。定期的なメンテナンスをしっかり行うことで、50年程度は張り替えることなく使用できるといわれています。
その耐久性の高さから、戸建ての住宅だけではなく高層ビルでも外壁や屋根などで使用されています。メンテナンスをしながら長い間住み続けられるような住宅が求められている現代にマッチした素材だといえます。
・断熱性
ALCパネルは内部に気泡があり空気の層を作り、内部の気泡によって熱が伝わるのを抑制する効果があります。コンクリートの十分の一の熱伝導率の低さから、断熱性の高さにつながります。ALCパネルを断熱材と一緒に使用することで快適な住環境を整えることができます。夏は涼しく、冬は暖かいことから、エアコン代の節約にもつながります。
また家の外と中の気温差が少なくなることで、空気中の水蒸気が冷えることで起こる結露を抑制することもできます。結露を放置するとカビが生えてしまうこともありお手入れに手間がかかってしまいます。断熱性の高さは、生活において大きなメリットといえるでしょう。
・耐火性
ALCパネルは耐火性に優れており、安全性の高い素材です。アスベストやホルムアルデヒドといった有害物質を含んでおらず、無機物を原料としていることから火災が起きてしまったとしても有害物質が発生しないのもメリット。
◼ ALCパネルのデメリット
機能面でメリットの多いALCパネルですが、もちろんデメリットもあります。メリットとデメリットのどちらも考慮した上で外壁材を選ぶ必要があります。またデメリットを補うためには何よりも定期的なメンテナンスが大切だということも覚えておいてください。
・つなぎ目
ALCパネルはモルタルのように塗って仕上げるのではなく、少しずつ張り付けていく素材です。サイディングも同じような方法で張り付けていきますが、ALCパネルの方が一枚一枚のサイズが小さく設計されています。
パネルとパネルの間にはつなぎ目があるため、シーリング材で埋めていく必要があります。しっかり埋めていなかったり劣化したりすると雨漏りを引き起こす可能性もあります。つなぎ目の多さから、サイディングよりもメンテナンスを入念に行う必要があります。
・防水性が低い
主成分の一つであるセメントは吸水性が高いという特徴があるため、ALCパネルは防水性が低くなってしまいます。内部の気泡に水が入ってしまうと、冬の寒さで水が凍結し、ひび割れてしまう可能性もあります。耐久性が高いというメリットを生かすためには、塗装をして防水性を高めることをおすすめします。ALCパネルの塗装については次の項目でご紹介します。
・費用面
ALCパネルは機能性が高い一方で、その分費用が高い傾向にあります。耐用年数が長いため、一度取り付けると長い期間張り替える必要はありません。新築のときの費用を抑えるために安い外壁を採用すると、後々メンテナンスや修理で費用がかかってしまうこともあります。はじめに支払う費用が高かったとしても、張り替える頻度が低い方がコストパフォーマンスが良い場合もあります。
しかし長い間張り替えの必要がないからといって、その間何もしなくて良いわけではありません。定期的なメンテナンスは必要なので、トータルコストとしてどうであるかを検討するようにしましょう。
◼ ALCパネルの塗装について
ALCパネルの内部に水が入ってしまうと、組み込まれているワイヤーが錆びてしまい強度が低下します。ALCパネルの機能性を維持したまま外壁として使用するためには、塗装が欠かせません。ALCパネルの塗装についての注意点をご紹介します。家の外壁にALCパネルを使用していて塗装を検討している場合は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
・防水塗料
防水塗料とは塗料の種類のことではなく、防水性の高い塗料のことをいいます。塗装を塗って乾燥させたあとでも伸び縮みする弾性塗料を指す場合もあります。弾性塗料は塗膜が伸縮するため、ひび割れを防ぎます。防水性の低いALCパネルの表面を保護するためには、防水塗料を使用することをおすすめします。
・シーリング材
シーリング材には防水機能がありますが、経年劣化によって機能が落ちてきます。シーリング材には可塑剤が含まれているものと含まれていないものがあります。可塑剤が含まれていると表面がベタついて汚れが付きやすくなってしまうため、可塑剤が含まれていないシーリング材を使用することをおすすめします。
・定期的な点検
ALCパネルの外壁にはどのような劣化の症状が考えられるのでしょうか。外壁が紫外線を浴び続けることで塗膜が劣化し、顔料が粉状になって表面化する状態をチョーキングといいます。チョーキングが起こると外壁を手で触ったときに白い粉が手につくため、定期的に触ってチェックしてみると良いでしょう。チョーキングと一緒に色褪せや変色が起こる場合もあります。
パネルとパネルの間に使われているシーリングの劣化、ひび割れが起こると雨漏りにつながってしまいます。またALCパネルは吸水性の高さからカビやコケが発生してしまうこともあります。雨が当たりやすい箇所や日が当たりにくく湿気がこもりやすい箇所は注意が必要です。ALCパネルは防水性が低いため、長く使用するためには定期的なメンテナンスが大切です。劣化の症状が出ていなかったとしても、数年ごとに点検を行うと安心して生活できます。
◼ まとめ
ALCパネルは軽量気泡コンクリートとも呼ばれており、珪石やセメントを主成分とする素材のことをいいます。コンクリートの四分の一ほどの重さしかなく、内部に気泡があるのが特徴です。耐久性が高く、家を建ててから50年は張り替える必要がないともいわれています。断熱性にも優れているためエアコン代の節約や結露の発生を抑制できるのもメリット。
その一方で、パネルとパネルの間のつなぎ目から水が入ってしまう可能性や、防水性の低さがデメリットとなります。つなぎ目にはシーリング材を使用し、塗装でパネルの表面を保護する必要があります。防水性を高めるために、防水塗料を使用することをおすすめします。
塗装屋ぬりべえでは、シリコン塗料やフッ素塗料、ラジカル塗料、遮熱塗料、無機塗料といったさまざまな種類の塗料を取扱っています。ご自宅の外壁材にぴったりの塗料や色をご提案し、お客様に満足いただけるような塗装を心掛けています。
・ひび割れを修復して防水性の高い外壁に
前回の塗装から10年以上経過し、ひび割れが起きていたことからご依頼をいただきました。ひび割れの補修を行った上で、防水性を高めるための塗装を行いました。塗装前の色とイメージが変わることのないような仕上がりになりました。
・色褪せした2階部分を塗装して建物を保護
1階部分はタイルなので問題ありませんが、2階部分で雨漏りが起きたら困るため事前に塗装を行いたいとのことでした。紫外線によって色褪せが起こっていたため、白に近い淡いピンク色を使用してかわいらしい雰囲気の外壁に仕上がりました。
・ラジカル塗料で長持ちする家に
中古物件を購入して外観をきれいにしたいとのことでした。屋根には遮熱塗料、外壁にはラジカル塗料を使用することで長持ちする外壁に仕上がりました。グレー一色だった外観から、白と黒のツートンカラーのおしゃれな外観になっています。